本態性振戦を克服する方法のご紹介。

7.カミングアウト

自分がこの疾患を患っていることについて、どの程度周りに知らせる必要があるでしょうか?
親しい人には、話しておくと何かと気が楽になるかと思います。

ですが、話していたとしても、実際にその症状を見るとドン引きする人がほとんどでした。

しかし、社会に出て会社に入社する時には、カミングアウトすべきでしょうか?
経験から言えば、カミングアウトすることは足枷になることはあっても、好材料となることはないでしょう。

私が発症したのは大学三年の夏です。
「これはもうダメだな」というのが、その時の率直な感想でした。

最初の会社では、本態性振戦のことを隠して入社し、なんとかやりくりしていましたが、
残業で疲労が嵩んでいる時に、薬の効果が切れて、振戦から痙攣に発展し、救急車をよばれて仕事を外されました。

次の職場でも、症状を隠して仕事を続けましたが、疲労とストレスで振戦から痙攣に発展しました。
薬を飲みつつ誤魔化してきましたが、結果的に副作用によって薬が飲めなくなり、仕事を辞ることになりました。

もう薬を飲めなくなった状況での転職は、非常に悩みました。

私の発作は、ストレスや睡眠不足はもちろん、
腕や手先の疲労からも始まりやすいものでしたが、
手を使わない仕事などほとんどありません。

辞めることになった職場は調剤薬局でしたので、
粉薬や軟膏の混合などがあり、腕への負担が大きかったのですが、 どの調剤薬局も、ある程度手先は使います。

粉薬や軟膏の混合などがなくても、薬の一包化のために、錠剤やカプセルを取り出す薬局は多々あり、
これをしている間に発作が起こってアウトだろうな、と思いました。

いくつかの会社の面接では、
すべてカミングアアウトしたうえで雇用してもらえるか打診しましたが断られました。
その時の眼差しは、とても差別されている感じで、今思い出しても気持ち悪くなるぐらい嫌でした。

また同時に、今まで障害を持っている人に対して、
自分がそんな視線を送ったことがなかっただろうか、と猛省しました。
きっと病気持ちの人や、先天的疾患を抱えている人は、
こういう門前払いによって、すごくつらい思いをしているんだろうなと思いました。

その後、異業種などで、手先を使うことができるだけ少ない職場を探したものの、
「結局は新しく仕事を覚えることでストレスになる。
 それなら、今持っているスキルで精神をコントロールして発作を起こさなくする方がよいのではないか?」
と考えるようになり、同業他社に転職しました。

「疾患のことは、墓まで持っていけ。知らないで通せ。発作さえ起こさなければいい。」
兄の助言に従い、カミングアウトはしませんでした。

近年、てんかんの患者さんが、痛ましい事故を起こしてしまったことは記憶に新しいかと思います。
私が自身の病態を隠して就業したことは、決して褒められる行為ではありません。 個人的には、人間の自由とは、他人に迷惑をかけない範囲で保障されるべきものだと考えます。
最悪のケースで、どこまで迷惑をかけることになるかを考え、
それが自身の責任の負える範囲内であるのであれば、全てを話す必要はないのかと思います。

振戦が再発して迷惑をかけるようなら辞めるつもりでいましたが
その職場では、一度も発作を起こさなかったし、既に治癒しているので、これで良かったのだと思います。

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